芝生の害虫@シバオサゾウムシの生態と対処方法

この記事では、芝生の害虫であるシバオサゾウムシの生態や、家庭の芝生におけるシバオサゾウムシの対処方法を解説していきます。

この記事を読んでいる方は、シバオサゾウムシの被害に頭を悩ませている人が多いのではないでしょうか?

うちの庭の芝生にもシバオサゾウムシが大量発生した経験があります。私自身がシバオサゾウムシの被害に頭を悩ませているのでよくわかるのですが、シバオサゾウムシは本当に厄介な害虫ですよね。

私が実際にシバオサゾウムシ対策を考える上で困ったのは、インターネットで検索してもシバオサゾウムシの情報が少ないということです。情報があったとしても昆虫図鑑的な内容であったり、ゴルフ場での発生事例の紹介などが多く、一般家庭の芝生におけるシバオサゾウムシの情報はほとんどありません。

そこで、今回は私が今までに調べたシバオサゾウムシに関する情報や、私が実践したシバオサゾウムシへの対処方法などをまとめて紹介します。シバオサゾウムシが発生して困っているという人は、是非最後までご覧ください。

本記事ではシバオサゾウムシの画像を掲載していますので、虫が苦手な方はご注意ください。

目次

シバオサゾウムシの生態

シバオサゾウムシは体長10mm程度の小型の甲虫であり、成虫・幼虫ともに芝生を専門的に食べる厄介な害虫です。

シバオサゾウムシってどんな虫?

シバオサゾウムシの成虫は芝生表面~地下数センチの浅いところに生息しています。

成虫は夜19時以降になると芝生表面に出てきて、地上で交尾をして芝草の茎などに卵を産みます。

卵から生まれた幼虫は芝草の茎や根を食べながら地中へと潜っていき、そのまま地中で蛹になって成虫へ羽化します。

芝生にとって特に厄介なのはシバオサゾウムシの幼虫です。この幼虫は芝草の茎や根を専門的に食べる(食害する)ため、芝草が根から水や栄養素をうまく吸えなくなり、芝草が弱ったり枯れる原因になります。

上の画像は、シバオサゾウムシの被害をうけたうちの庭の芝生です。これでシバオサゾウムシの発生初期~中期ぐらいだと思いますが、食害の影響がみられます。このときは6月上旬だったので本来は芝生が成長して密度が高まっていく時期ですが、見ての通りハゲが目立つ状態な上に葉の黄化や紅葉などの症状も出ており、芝生が弱っていることが伺えます。

シバオサゾウムシの幼虫は成長するにつれて食べる量もどんどん増えていきます。早めに対策しないと芝生が枯れてしまうこともあるので注意しましょう。

シバオサゾウムシが発生する時期は?

シバオサゾウムシによる芝生の被害が発生しやすい時期は年2回あると言われています。

1回目のピーク時期は、梅雨が明けた後の7月下旬~8月にかけての時期です。

これは5月から6月にかけて成虫が生んだ卵から孵化した幼虫が、6月下旬から7月中旬の梅雨時期にかけて増加して芝の根を食害する影響によるものです。この食害の影響と、梅雨が明けて真夏の乾燥が重なることにより、芝生の被害が拡大しやすくなるのです。

2回目のピーク時期は、10月から11月にかけての時期です。

これは7月下旬から8月上旬に羽化した新成虫等の生んだ卵から孵化した幼虫が、9月から10月にかけて増加して芝の根を食害する影響によるものです。芝生は気温の低下ととも休眠期へと向かうため、この時期に食害が広がると芝生が回復せず大きな被害を受けることがあります。

9月以降に生まれた幼虫は、年内に成虫へ羽化して冬越しするものと、幼虫のまま冬を越して翌春に成虫へ羽化するものの二種類に分かれます。いずれも冬の間は地中で活動を停止し、気温が上昇する翌春4月頃から活動を再開します。

(参考文献:田中 尚智、河野 哲、廣瀬 敏晴、二井 清友、足立 年一、山下 賢一、八瀬 順也(1995)「兵庫県のゴルフ場におけるシバオサゾウムシの発生推移」)

このようにシバオサゾウムシの活動には一定のサイクルがあり、年間を通じて成虫と幼虫が混在しているのが特徴です。

近年は温暖化の影響で以前より気温が高くなることもあり、シバオサゾウムシの活動も以前より活発になっている可能性があります。そのため、家庭の芝生においてシバオサゾウムシの被害が疑われる場合は、様子をよく観察して判断しましょう。

シバオサゾウムシはどこからやってくるのか?

シバオサゾウムシはアメリカからの侵入害虫です。

1960年代にアメリカから輸入した芝生にくっついてきて一緒に侵入したとされており、1980~1990年代にかけて本州・四国・九州のゴルフ場で大きな被害を出して問題になっていました。

それでは、家庭の芝生においてシバオサゾウムシがどこからやってくるのかというと、芝生のソッド(マット状に切り取られた芝生の苗)にくっついて圃場(芝生の農場)からやってくる可能性が考えられます。

実際に、うちの芝生で発生しているシバオサゾウムシは、芝生を通販で購入したときに一緒にくっついてきたものです。芝張りをする前に目視でなるべく取り除きましたが、取り逃した個体が繁殖したのでしょう。

<通販で購入した芝生に混入していたシバオサゾウムシ>

しかし、家庭の芝生においてシバオサゾウムシの被害で困っているという声はあまり多くありません。少なくとも、主要な芝生の害虫であるシバツトガ・スジキリヨトウ・コガネムシ類に比べると、シバオサゾウムシが珍しい害虫であることは間違いないですよね。

その理由の1つとして、シバオサゾウムシの移動能力が低いということが挙げられます。シバオサゾウムシの成虫は飛翔能力が低いのであまり長距離の移動はしないと考えられています(ゴルフ場近くの水田で発見された例などがあるので全く移動しないわけではないでしょうが)。

つまり、シバオサゾウムシは、蛾やコガネムシのようにどこからともなく飛んできて庭の芝生に卵を産み付けるというケースは稀ではないかと思われます。

したがって、シバオサゾウムシの対策としては、芝張りをする前に芝生にシバオサゾウムシが混入していないかどうか確認して、最初から庭に入れないようにするのが一番良いでしょう。

シバオサゾウムシの被害から芝生を守る方法

続いて、既にシバオサゾウムシが家庭の芝生に入り込んでしまった場合はどうすればいいのかを解説します。

シバオサゾウムシを手作業で駆除するのは難しい

残念ながら、シバオサゾウムシを手作業で駆除するのは3つの理由から非常に難しいです。

理由の1つ目は、シバオサゾウムシの幼虫が地中に潜んでいるからです。

シバオサゾウムシの成虫は芝生の茎に卵を産み、その卵から生まれた幼虫は芝草の茎や根を食べながら地中へと潜っていき、最終的には深さ10cm以上のところで蛹になって羽化します。

シバオサゾウムシの幼虫を手作業で駆除しようとしたら、芝生を剥がして深さ10~15cm程度まで掘り返すしかないということになります。これでは現実的な対策とは言えません。

理由の2つ目は、シバオサゾウムシのサイズが小さくて発見しにくいことです。

シバオサゾウムシの成虫は芝生表面~地下数センチの浅いところに生息しているので、夜中に交尾するために地上に出てきたところを捕獲することは可能です。

しかし、シバオサゾウムシのサイズは約10mmと非常に小さく、夜中に目視で探すのはかなり大変です。シバオサゾウムシは暗褐色をしているので土の色と同化したり、芝生の葉に隠れてしまって見つけにくいのです。

このため、地上に出てくるシバオサゾウムシの成虫を捕獲するのも簡単ではありません。

理由の3つ目は、シバオサゾウムシは雌1匹あたり50~100個の卵を産むと言われており、どんどん交尾して増えるということです。

私は芝生の見回りを毎晩してシバオサゾウムシの成虫を捕獲していました。夜になるとシバオサゾウムシの成虫が交尾をはじめるので、そこを狙って駆除しようと試みたのです。

それを毎晩続けて毎日0~10匹程度を捕獲していましたが、そこまでやっても焼け石に水でありシバオサゾウムシの被害を抑えることはできませんでした。

以上の理由から、被害が目に見えるぐらい広がったシバオサゾウムシを手作業で駆除するのは不可能に近いというのが私の体験からの感想です。

おすすめは殺虫剤を使用すること

シバオサゾウムシへの有効な対策は、殺虫剤を使用することです。

殺虫剤を使用するときの原則は、できるかぎり発生初期に使用することです。

シバオサゾウムシは芝生にとって非常に厄介な害虫ですが、最近では有効な殺虫剤が開発されているため、適切な方法で殺虫剤を使用すれば最も確実で簡単に駆除することができるでしょう。

<殺虫剤『フルスウィング』使用後のシバオサゾウムシ成虫の死骸>

私も手作業での駆除をあきらめて殺虫剤を使用することにより劇的に被害を減らすことができましたので、具体的なやり方については続いて解説していきます。

シバオサゾウムシに効く殺虫剤

シバオサゾウムシ対策におすすめの殺虫剤は『フルスウィング』

私がシバオサゾウムシ対策としておすすめする殺虫剤は『フルスウィング』です。

私はシバオサゾウムシ対策として『スミチオン』と『フルスウィング』という二種類の殺虫剤を使いましたが、私の経験では『フルスウィング』の方が明らかに高い効果を発揮しました(※)。

『フルスウィング』は芝生専用の殺虫剤であり、Amazonや楽天市場などのネット通販で購入することができますよ。

また、フルスウィングは水和剤といって水に溶かしてから使用する薬剤ですが、顆粒タイプなので粉タイプのように粉が舞ったり泡立つことも少なく、水に溶かしやすいので便利です。

殺虫剤によくある刺激臭もなく無臭なので、初心者の方でも扱いやすい殺虫剤といえます。シバオサゾウムシ以外にも幅広い種類の害虫に対して使えるので、一本持っておくと安心できますよ。

(※)『スミチオン』と『フルスウィング』は混用せず、一定の日数を空けて別々に使用しました。

『フルスウィング』の特徴

フルスウィングはネオニコチノイド系の殺虫剤(有効成分はクロチアニジン)です。

フルスウィングの特徴は、殺虫剤の成分が芝生の葉や根から吸収され、芝生の体内に広がる効果があることです。この性質を「浸透移行性」といいます。

浸透移行性のすごいところは、殺虫剤の成分が広がった芝生を食べた虫にも殺虫効果を発揮するので、害虫に直接農薬をかけなくても殺虫効果があるということです。

フルスウィングは「接触食毒剤」といわれるタイプの薬剤です。殺虫剤に触れた虫に効果を発揮する「接触毒」と、殺虫剤が浸透した植物を食べた虫に効果を発揮する「食毒」の両方の機能があるということです。

また、浸透した殺虫剤の成分は、雨で流れたり紫外線で分解されにくいため、殺虫剤の効果が長い間続くという効果もあります。これが「残効が長い(残効性が高い)」といわれるものです。

『フルスウィング』がシバオサゾウムシ対策として有効な理由

シバオサゾウムシに対して使える殺虫剤は他にもありますが、中でもフルスウィングがシバオサゾウムシ対策として有効と言えるのは、フルスウィングが「浸透移行性」がある接触食毒剤タイプの殺虫剤だからです。

1980~1990年代にかけて全国各地のゴルフ場でシバオサゾウムシが大発生していたのは、当時まだシバオサゾウムシの情報が少なかったということもありますが、シバオサゾウムシの幼虫が地中深くに潜んでいるため従来の殺虫剤(有機リン系や合成ピレスロイド系など)が効果を発揮しにくかったことも大きな要因でした。

しかし、フルスウィングなどのネオニコチノイド系殺虫剤の登場したことにより、シバオサゾウムシの幼虫やコガネムシの幼虫など地中に潜む害虫の対策は大きく変化しました。

地中に潜む幼虫に対しては、従来の殺虫剤であれば散布する量を増やすしかないため、費用や手間の問題だけではなく薬害や周囲の環境に与える影響などにも大きな問題がありました。しかし、ネオニコチノイド系殺虫剤の登場により、少ない薬剤量で地中に潜む幼虫を的確に狙えるようになったのです。

また、シバオサゾウムシは常に成虫と幼虫が混在して活動しており、殺虫剤を散布したときに地中深くで蛹になっている個体には効きづらいという問題がありますが、フルスウィングには「残効が長い(残効性が高い)」という特徴があるのであまり時期を気にせず使用することができます。

そのため、芝生に害虫の被害が出ていたり、シバオサゾウムシの成虫を地上で発見するなど、シバオサゾウムシの被害が疑われるときはなるべく早くフルスウィングを使用することをおすすめします。

『スミチオン』はローテーション用の殺虫剤としておすすめ

フルスウィングをメインの殺虫剤として使用する場合、ローテーション用の殺虫剤は『スミチオン』がおすすめです。

そもそも殺虫剤というのは一度使えば害虫を必ず全滅させられるわけではなく、害虫の数を減らして被害を抑えるのが主な目的になります。そのため、状況を見ながら繰り返し殺虫剤を使っていくこともあるわけですが、殺虫剤は一種類を使い続けるのではなく、複数の殺虫剤を順番にローテーションして使う必要があります。

一種類の殺虫剤、例えばフルスウィングばかりを使用すると、フルスウィングに抵抗性を持った害虫が増加してしまい、最終的にはフルスウィングが効かない害虫ばかりになってしまう恐れがあります。複数の殺虫剤をローテーションすることによって、特定の殺虫剤に抵抗性を持った害虫が増えるリスクを下げることができるのです。

ローテーションで使う殺虫剤は、メインで使う殺虫剤と違う系統の殺虫剤から選んでください。メインをフルスウィングにする場合、ローテーション用には有機リン系殺虫剤の『スミチオン』が良いでしょう。

『スミチオン』は接触毒タイプで即効性が高く、芝生はもちろん穀物・野菜・果樹など幅広い作物に使用することができる殺虫剤です。どこのホームセンターでも販売されているので入手しやすく、使いやすいのでおすすめです。

ちなみに、私はフルスウィングとスミチオンをローテーションして使っていますが、シバオサゾウムシへの効果で言うと明らかにフルスウィングの方が有効でしたので、メインで使うのはフルスウィングをおすすめします。

うちの庭にシバオサゾウムシが発生し、殺虫剤を使用したときのレポートは以下の記事に記載していますので、興味がある方はあわせてご覧ください。

まとめ

シバオサゾウムシの生態と対処方法のまとめです。

  1. シバオサゾウムシは成虫・幼虫ともに芝生を食害する害虫である
  2. 特に厄介なのはシバオサゾウムシの幼虫であり、
    芝生の茎や根を食べながら地中へ潜っていくので駆除が難しい
  3. シバオサゾウムシの一番の対策は最初から庭に入らせないこと
    芝張りをする前にシバオサゾウムシが芝生に混入していないか確認しよう
  4. 既に庭の芝生にシバオサゾウムシが入り込んでしまった場合、
    手作業で駆除するのはまず無理なので早めに殺虫剤を使った方が良い
  5. シバオサゾウムシ対策におすすめの殺虫剤は、
    浸透移行性があって残効性が高い『フルスウィング』

フルスウィングはホームセンターなどでは販売されていないので、Amazonや楽天市場などのネット通販で購入しましょう。

シバオサゾウムシは厄介な害虫ですが、早期対策すれば被害を抑えることは十分可能ですよ。

この記事が、少しでもシバオサゾウムシに悩まされている人の助けになれば幸いです。



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