最初に芝生を張った年は綺麗な芝生だったのに、年数が経つに連れて芝生の元気がなくなってきて困っているという方はいませんか?
もしかしたら、長年にわたり芝生の上を歩くことによって地面が踏み固められ、空気や水の通りが悪い土になってしまったのが原因かもしれません。そのまま放っておくと、ますます芝生の勢いが衰えていってしまうでしょう。
心当たりのある方は、エアレーション(スパイキング・コアリング)という芝生の更新作業を行い、土壌をリフレッシュさせることをおすすめします。
この記事では、エアレーションの目的や具体的な手順を順番に解説していきます。初心者の方でも簡単に行うことができますので、是非やってみてください。
芝生TM9の更新作業とは?
芝生の更新作業とは、芝生が育ちやすい環境を整えるために行う一連の作業のことです。
具体的には、以下のような作業を行います。
芝生が活動を開始する前に行う更新作業 (2月下旬~3月上旬頃) | ・低刈り ・サッチング ・目砂入れ ・芝焼き |
芝生が活動を開始した後に行う更新作業 (3月下旬~4月頃) | ・エアレーション(スパイキング・コアリング) ・目砂入れ ・スライシング |
更新作業は適切な時期に行わないと逆効果になりかねないので気を付けてください。
今回は、エアレーション(スパイキング・コアリング)など芝生が活動を開始した後に行う更新作業について解説していきます。低刈りやサッチングなど、芝生が活動を開始する前に行う更新作業について知りたい方は、前回の記事もあわせてご覧くださいね。
エアレーション(コアリング)の目的と効果
エアレーションの目的と効果
エアレーションとは、専用の器具を用いて芝生と土壌に穴を開ける、芝生の更新作業です。
芝生を張ってから年数が経つに連れ、芝生の下の土は次第に踏み固められてカチカチの状態になっていきます。土がカチカチの状態になると、水や空気を通しにくくなるため、芝生の成長に悪影響を及ぼします。
エアレーションの目的は、地面に穴を開けて水や空気の通り道を確保して、芝生が成長しやすい土壌を整えることです。また、芝生の根を切ることによって、新しい根の成長を促す効果も期待できますよ。
スパイキングとコアリングの違い
エアレーションにはいくつかの種類があり、代表的なものにスパイキングとコアリングの2つがあります。
結論としては、エアレーション効果の高いコアリングがおすすめです。
スパイキングとは、尖った釘のようなスパイクを芝生に突き刺して、芝生と地面に穴を開ける方法です。
ローンスパイクと呼ばれる専用の器具を用いるか、サンダルの底にスパイクがついた靴型の器具を用いて行います。
スパイキングは芝生へのダメージが少なく、作業も比較的簡単で手軽に行えるのがメリットです。一方、効果が長続きせず限定的なのがデメリットです。
コアリングとは、専用のローンパンチを用いて、踏み固められた土を一部抜き取って穴を開ける方法です。
コアリングはエアレーション効果が高く、長続きするのがメリットです。一方、芝生へのダメージが大きく、作業が比較的大変なのがデメリットです。
コアリングをおすすめする理由
コアリングをおすすめする理由は、古い土やサッチ層を物理的に抜き取って目砂を入れることにより、高いエアレーション効果と土壌改良効果が期待できるからです。
芝生を張った後から土壌を改良する方法は、芝生の張り替えを除けばコアリングぐらいしかありません。そのため、粘土質の土壌に悩んでいる方や、子どもや犬が芝生の上で遊びまわるなど踏圧がかかりやすい場所では、コアリングが特に有効です。
一方、スパイキングは穴の径が小さく、コアリングに比べるとエアレーション効果は限定的です。スパイクを突き刺したときに周囲の土に圧力がかかり、穴の周囲の土が押し固められてしまうデメリットもあるので、粘土質の土壌ではスパイキングだけでは効果が低いかもしれません。
スパイキングは芝生へのダメージが少なく、作業も比較的簡単で手軽に行えるのがメリットです。それほど手間をかけたくない場合や、調子の悪い場所だけ追加で手入れしたい場合はスパイキングが便利なので、コアリングと使い分けると良いでしょう。
コアリングをするべきかどうかの判断基準
コアリングは毎年必ずやらなければならない作業ではありません。
コアリングは土ごと芝生をくり抜くので、芝生へのダメージが大きいです。芝張りしてから1~2年目は、まだ芝生の根っこが十分に成長しておらず、コアリングをすると逆に芝生が弱りかねないので止めましょう。また、そもそも芝生を綺麗に仕上げたいというこだわりが低く、ほどほどの芝生で良いという場合はコアリングをしなくても問題はありません。
最初に述べた通り、「芝生を張った年は綺麗な芝生だったのに、年数が経つに連れて芝生の元気がなくなってきて困っている」という場合はコアリングを試してみると良いと思います。
コアリングする時期は人によって若干異なりますが、一般的には芝生の生育期に行うのが良いとされています。暖かくなって芝生が活動を開始する3月下旬~4月上旬頃から、遅くとも梅雨前までには終わらせるようにしましょう。
エアレーション(コアリング)におすすめの器具
キンボシ ローンパンチX
結論から言うと、コアリングが初めてで何を買えば良いのかわからないという初心者の方は、キンボシ製のローンパンチXを購入することをおすすめします。
ローンパンチXは3,000円以下の手ごろな価格にもかかわらず、しっかりとした作りで耐久性や切れ味に問題はなく、必要十分な機能を備えているので万人におすすめできます。また、土の排出口にポットやペットボトルをセットすれば、コアリングで抜いた土が収集できるようになっており便利ですよ。
キンボシは明治3年(西暦1870年)創業の老舗企業であり、ローンパンチの他にも芝刈り機など人気の芝生用品を数多く作っている信頼できる国内メーカーです。コスパを求める方はキンボシのローンパンチを選んでおけば間違いありません。私も愛用しているので自信を持っておすすめできます。
バロネス タインエアレーター
最高級の仕上がりを目指したい方は、バロネス製のタインエアレーターをおすすめします。
バロネス製のタインエアレーターは、タイン(穴あけ用の金属製の筒)の切れ味が非常に良く、タインの長さも長いのでより効果的なコアリングが可能となります。
バロネスはゴルフ場でも使用される本格的な芝生用品を作っている企業であり、芝生愛好家から高い評価を受けているのですが、唯一のデメリットは価格が高いので万人におすすめはしにくいことです。
しかし、一度バロネス製品を使うと他のメーカーにはもう戻れないという人も多く、初期費用は高価ですが丈夫で長く使えることもあり満足度は非常に高いようです。芝生にとことんこだわる方にはおすすめです。
エアレーション(コアリング)の手順
エアレーション(コアリング)の作業の流れは以下の通りです。
コアリングの基本的なやり方は、ローンパンチを足で踏み込んで芝生に突き刺していくだけです。何度か繰り返していると古い土が自動的に排出されるので、後はそれを繰り返していきましょう。
コアリングの穴を開ける間隔に明確な決まりはありませんが、私は10cm間隔でコアリングしています。
間隔を細かくするほど高いエアレーション効果が期待できますが、その分だけ労力もかかるし穴を埋める目砂の量も多く必要です。庭全体を均一にコアリングする必要もないので、よく歩くところなど踏圧がかかりやすい場所や芝生の生育が悪いので改善したい箇所などがあれば、重点的にコアリングをするのも良いと思います。
また、地面にメジャーを置いてガイドにすると、コアリングする間隔がわかりやすく、ブレずに真っ直ぐ進めるので作業しやすく感じました。とはいえ、多少ブレたところでコアリングの効果に変わりはありませんので、面倒くさければガイド無しでサクサク進めちゃってもOKです。
コアリングした後は、抜き出した土が芝生の上に散らばるので、レーキやトンボなどを使って回収します。土は抜き出した直後より、少し時間をおいて乾燥させた方が回収しやすいですが、それでも面倒くさいです。
キンボシのローンパンチXなど、本体にポットやペットボトルを装着して抜き出した土を回収できるローンパンチを使用すれば、芝生の上に散らばった土を回収する手間が省けるのでおすすめです。
興味本位で試しにペットボトルを装着せずコアリングしてみたのが上の写真ですが、土を回収する面倒くささが段違いだったのですごく後悔しました…もう二度とやりません…。
コアリングは重労働なので、ちょっと道具に気を遣うだけで省力化できるのは大きいです。作りもしっかりしていて、何より値段もお手頃なので、初めてコアリングをするという方はキンボシのローンパンチXを買えば間違いないですね。
コアリングをした後は、必ず目砂入れを行います。
コアリングはスパイキングと違って穴が大きいので、目砂を入れないと穴はなかなか自然には塞がりません。穴が開いたままだと芝生の根が乾燥する原因になる上に見た目もよくありません。
コアリングで古い土やサッチ層を抜き取り、代わりに新しい目砂を入れることによって、土壌への通気性・透水性が改善します。目砂を入れずにそのままにしておくよりエアレーション効果も長続きするので、コアリング後に目砂を入れることは大変重要です。
なお、一つずつ手作業で全ての穴に目砂を入れていくのが理想ですがとても大変です。穴を開けるのは立ったままサクサク進められますが、目砂を入れるのはしゃがみこんでの作業になるので体への負担も大きいです。
そこまで手間と労力をかけられないという場合は、芝生の上にドサっと目砂を撒いてブラシで刷り込んでいく方法がおすすめです。
色々試してみましたが、コアリングが終わってから少し時間をおいて穴の周囲を乾燥させてから、乾燥したサラサラの目砂を撒き、ブラシで刷り込む方法が一番楽にできました。
芝生や目砂が湿っていると、芝生やサッチ層に目砂が引っかかってスムーズに穴へ落ちていかないので、表面から見ると穴が埋まったように見えても実際は穴の中は空洞のままということがよくあるので注意しましょう。
コアリングした後は土が乾燥しやすいので、目砂入れが終わったら最後に散水してください。
コアリングの穴に目砂がしっかり入っておらず空洞のままになっている場合、散水することによって空洞が埋まって穴が再び顔を出すことがあります。散水後に穴を見つけたら、なるべく目砂を足し入れてあげましょう。
地面が固くてコアリングできない場合の対処方法
地面が固くてコアリングできないという場合、主な原因は2つ考えられます。
1つ目は、土壌が粘土質や真砂土でカチカチに固まっている場合です。最初からローンパンチが地面にほとんど刺さらず、刺す場所を変えても解決しない場合は、土壌そのものに原因がある可能性が高いでしょう。
対処方法は、力を入れて踏み込むことで大体は解決するのですが、どうしても難しいようであれば雨が降った後を狙うか、事前に散水してからコアリングしてみてください。
2つ目は、土の中に埋まっている石などが障害になっている場合です。コアリング途中の一定の位置から全く刺さらなくなりローンパンチを上下するとカチカチと音がする、刺す場所を変えればコアリングできるという場合は、石などに当たっている可能性が高いでしょう。
対処方法は、諦めて違う場所をコアリングするのが一番簡単ですが、気になる場合は石を掘り出すしかありません。
ローンパンチが当たるということは、大体10cm以内に石があるはずなので、芝生の生育を考えると掘り出すに越したことはありません。
まずは移植ごてを突き刺してみて石の大きさを探ります。この辺は慣れの問題もありますが、小さい石であればそのまま穿り出すことができるでしょう。
石が大きそうなら穿り出すのは無理なので、剣先スコップをザクっと突き刺し、芝生をめくって掘り出す必要があります。
石を掘り出したら目土か砂を入れて埋め戻します。
目土や砂は多めに入れた方がいいです。地中に空洞ができないように移植ごてで砂を挿し入れるようにすると効果的です。
埋め戻したら上から踏んで馴染ませます。後から沈下しがちなので、最初は少し膨らんでいるぐらいでもいいです。軽く踏んだだけで凹むようなら土が足りないので、もう一度芝生をめくって目土や砂を追加で足し入れましょう。
掘った後が目立つようですが、春に作業をしていれば芝生が生育して直ぐわからなくなるので安心してください。
この掘った場所一つからこれだけの石やガラが出てきました。芝張り前の土壌改良が不十分だとこういう場合があるので、掘り出すとスッキリしますよ。
逆にちゃんと土壌改良した場所であれば、取り逃した小石が1つ紛れているだけというケースが多い(はず)なので、無視して違う位置をコアリングする方が効率的かもしれません。
コアリングで抜いた土を再利用する方法
コアリングで抜いた土は目砂として再利用することが可能です。
目砂として再利用する場合は、コアリングで抜いた土を目の細かいふるいにかけて、粘土質の土の塊や小石・サッチなどを取り除いてから使用してください。
ただし、土壌全体が極端な粘土質の場合は、再利用せずに廃棄した方が無難でしょう。粘土の塊を細かく砕いてサラサラにしても、所詮は粘土なので水に濡れたらドロドロになってしまうからです。
どうしても再利用したい場合は、コルク状の粘土の塊を崩さない程度にふるいにかけて取り除き、残った土に市販の川砂や目砂をブレンドして再利用すると良いと思います。
まとめ
エアレーション(コアリング)のまとめです。
- 経年によって芝生の元気がなくなってきた場合は、
コアリングをして土壌をリフレッシュさせる対策が有効 - コアリングとはエアレーションの一種であり、
専用の器具で地面の土を一部抜き取って穴を開ける作業のこと - コアリングの適期は芝生の生育期
芝生が活動を開始する3月下旬~4月上旬頃から梅雨前までが目安 - コアリングした後には必ず目砂を入れる
- 初めてコアリングをする方にはキンボシ製のローンパンチXがおすすめ
エアレーション(コアリング)は重労働ですが、綺麗な芝生を目指す上では避けて通れない作業でもあります。
エアレーション(コアリング)をするときは適切な器具を使用したり、やり方をちょっと工夫するだけで手間を省くことができますので、あなたも是非挑戦してみてください!