芝生の害虫@ガガンボの幼虫の生態と対処方法

大きい蚊のような見た目をしたガガンボという虫をご存知でしょうか。家の壁に留まってじっとしていたり、門灯の周りでふわふわ飛んでいるあの虫です。

ガガンボは日本各地にいる虫ですが、実はガガンボの幼虫は芝生の害虫だって知っていましたか?

私は全然知りませんでした。というか、今までガガンボの幼虫について考えたことなんてありませんでしたが、今年初めて芝生にガガンボの幼虫がいることを発見したので調べてみて知りました。

ガガンボの幼虫は芝生の新芽や根を食べる害虫ですが、日本ではそれほどメジャーではないのかインターネットで情報を調べてもあまり見つかりませんでした。そこで、今回は私が調べたガガンボの情報をまとめて記事にしましたので、ガガンボの幼虫の被害に悩んでいる方や、ガガンボに興味があるという方は是非ご覧ください。

本記事ではガガンボの成虫や幼虫の画像を掲載していますので、虫が苦手な方はご注意ください。

目次

ガガンボの生態

ガガンボは蚊を大きくしたような見た目の昆虫です。

地方によっては、カトンボ、カノウバ、ショウジハリなどの名前で呼ばれることもあるそうです。

蚊のように素早く飛び回っているのではなく、壁や草木などに留まってじっとしていたり、ゆっくりふわふわと飛んでいることが多いです。

ガガンボの主食は花の蜜などですので、蚊と違って人や動物の血を吸うことはありません。

ガガンボの成虫は見た目が不快だということで「不快害虫」と呼ばれることはありますが、人や植物に直接的に害を与えることはありません。

一方、ガガンボの幼虫は土の中で植物の根を食べる習性があるため、田んぼでは害虫として認識されています。

<水稲 キリウジガガンボ>

年2回の発生である。幼虫態で土壌中で越冬し、3月下旬~5月下旬に蛹化、約3日で羽化する。
越冬世代成虫は3月下旬~6月上旬に発生する。1雌の産卵数は約600個で、卵は苗代、畦畔、溝等の湿地に産まれる。卵期間は約12日で、幼虫は土中の浅いところに生息し、腐植質とともにイネの幼根や幼芽を食害する。幼虫期間は約2カ月である。老熟すると土中の浅いところで蛹化する。第1世代成虫は8月下旬~10月中旬に現れ、春期の越冬世代成虫と同じように産卵する。4月下旬~6月上旬が温暖で、雨が多い年に発生しやすい。

出典:こうち農業ネット(https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/

このガガンボの幼虫は芝生にとっても害虫になり得ます。インターネットで調べた限りでは、日本では芝生の害虫としてはそれほどメジャーではないのかあまり情報がありませんでしたが、うちの庭では大量発生していました。

これはうちの庭にいたガガンボの幼虫です。3月下旬の夜間に発見したものです。

大きさは20~30mm程度で、ぱっと見では芋虫系の害虫に見えますが、どちらかというとウジ虫系の見た目で触感はブニブニしています。

最初はシバツトガの幼虫か何かだと思っていたのですが…

暖かくなるにつれて、地中にいるガガンボの幼虫は蛹(サナギ)を経て、地中から地上へ出てきて羽化をはじめました。

羽化途中のガガンボを前から見るとこんな感じです。なかなか衝撃的な絵面ですね…

最初に見た時はこれが何かよくわかりませんでしたが、地中からガガンボが出てきて羽化しているのだと気づいたときに、はじめてあの虫がガガンボの幼虫であったことがわかりました。

ガガンボが羽化した後、地上にはこんな風に抜け殻だけが残ります。もしこんなものを発見することがあれば、あなたの庭にもガガンボの幼虫がいるかもしれませんよ。

ガガンボの羽化に気付いた日、軽く見回りをしただけでこれだけの抜け殻がありました。

芝生のサッチングをしたときに出てきて駆除したものも50匹は下らないので、トータルではガガンボの幼虫が100匹以上いたのは間違いありません。

うちの芝生は元々生育が悪く、去年の夏も芝生のハゲが目立つ状態でした。詳細はわかりませんが、もしかしたら芝生の生育が悪い一因として、ガガンボの幼虫の食害の影響もあったのかもしれません。

しかし、今のところ芝生が完全に枯れてしまうような致命的な被害は見当たりませんので、大量発生するようならともかく多少であればそれほど神経質にならなくても良いのかもしれません。

ガガンボの被害から芝生を守る方法

ガガンボの被害から芝生を守る方法としては、まずはガガンボが大量発生しないような環境を整えた上で、発生したガガンボについては個別に対処していくことが基本です。具体的な方法は以下の通りです。

土壌の水はけを改善する

ガガンボは湿った土を好み、水中や田んぼなどの湿地に産卵する習性があります。ガガンボの幼虫が発生するということは、その土地の水はけが悪いということです。実際うちの庭の土壌は極端な粘土質で水はけがかなり悪いです。

そこで、庭の土壌の水はけを改善することによってガガンボの幼虫の被害を抑えられる可能性があります。

また、水はけの悪い土壌は芝生の生育にも悪影響を与えます。ガガンボの幼虫が発生するということは、土壌の水はけが悪いということなので、芝生の生育のためにも水はけを改善した方が良いでしょう。

水はけを改善するためには、芝張り前の土壌改良が大切です。芝生を張った後から水はけを改善するにはコアリングが有効です。土壌改良やコアリングのやり方については以下の記事をご覧ください。

サッチングでガガンボの幼虫を掘り出す

ガガンボの幼虫は地中の浅いところに生息しているため、芝生のサッチングをしていると発掘されることがあります。

枯れた芝生などが堆積したサッチ層は適度な湿り気と温度を確保できるので居心地が良いのかもしれません。サッチングで発掘されたガガンボの幼虫はサッチと一緒にサヨナラしましょう。

サッチングとは春に行う芝生の更新作業の一種です。サッチングって何?という人は以下の記事をご覧ください。

ガガンボの成虫を駆除する

ガガンボは一生の間に600個もの卵を産むといわれています。ガガンボが庭で繁殖する怖れがある場合は、ガガンボの成虫を発見したら産卵する前に駆除するようにしましょう。

ガガンボを踏み潰したりすることに抵抗があれば、市販の家庭用殺虫剤でも簡単に駆除することが可能です。ガガンボは動きが遅く、急に飛び掛かってくるようなこともしないので、落ち着いて対処すれば怖がる必要はありませんよ。

とはいえ、ガガンボは必ずしも駆除する必要があるわけではありません。前述の通り、ガガンボの成虫は(見た目が不快であることを除けば)害がありませんので、芝生に産卵して幼虫が生まれなければ問題はないのです。実際に芝生にガガンボの幼虫がいた場合や、被害を絶対に避けたいという場合のみ駆除するというのも良いでしょう。

殺虫剤(農薬)を使用してガガンボの幼虫を駆除する方法

既にガガンボの幼虫が大量発生してしまっている場合は、上記の対策では手に負えない可能性があります。

大量に発生した害虫を駆除する方法としては、殺虫剤(農薬)を使用する方法が一般的ですが、芝に使用できてガガンボに効く殺虫剤(農薬)はあるのでしょうか?

殺虫剤(農薬)を使用する

結論から言うと、芝に使用できる殺虫剤(農薬)で、ガガンボに適用登録されているものはありません。

農薬とは「農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害虫、病気、雑草など有害生物から守るために使われる薬剤」のことです。「農作物等」の病害虫の防除に用いる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤などは農薬であると法律上定義されています。

この法律における「農作物等」とは、人が栽培している植物を総称するものとされており、家庭菜園・庭木・盆栽・花卉・芝などの植物も含まれます。

日本では農薬登録を受けた農薬と特定農薬のみ使用できますが、登録農薬であっても適用外使用は認められません。登録を受けた農薬でもきちんと使用基準にしたがって使うことが義務づけられており、適用作物、使用量、使用回数、使用時期などを守らなければなりません。

参考:農薬工業会WEBサイト(https://www.jcpa.or.jp/

簡単に言うと、殺虫剤(農薬)を使用する場合は、説明書に書かれた使用基準を必ず守らなければならないということです。農薬について詳しく知りたいという方は、農薬工業会WEBサイト(https://www.jcpa.or.jp/)をご覧ください。

ガガンボの幼虫に効く殺虫剤(農薬)は芝生には使えないのか?

ガガンボに効く殺虫剤(農薬)はありませんか?

『ダントツフロアブル』や『箱大臣粒剤』などの農薬が適用害虫「キリウジガガンボ」として登録されています。しかし、これらの農薬は主に適用作物「湛水直播水稲」(田んぼのこと)などで登録されている農薬であり、適用作物「芝」で登録されているものはありません。

ガガンボに効く殺虫剤(農薬)を芝生に使ってはいけませんか?(※適用作物「芝」以外の農薬)

適用作物に「芝」が含まれていない農薬を、芝生に使ってはいけません。

適用作物に「芝」を含んでいない農薬は芝生に対する安全性が保障されていません。それを芝生に使用することによって、芝生が枯れてしまったり環境に悪影響を及ぼす可能性もあります。そもそも農薬の適用外使用は法律上禁止されていますので、使ってはいけません。

芝生に使える殺虫剤(農薬)はガガンボの幼虫には効かないのか?

これは難しいところですが、適用害虫「ガガンボ」として登録されていない農薬の全てが、ガガンボに対して全く効果が無いかというとそうではないでしょう。

なぜかというと、農薬を登録するためには莫大な費用と手間がかかるので、全ての作物・全ての病害虫に対して効果が有るか無いかを確認して登録しているわけではありません。ガガンボの幼虫は、「水稲」にとってはメジャーな害虫であり需要が見込めるため登録農薬がありますが、「芝」にとってはマイナーな害虫なので需要が少ないため登録農薬がないということです。

例えば、『ダントツフロアブル』や『箱大臣粒剤』などの適用害虫「キリウジガガンボ」で登録されている農薬の有効成分はクロチアニジンです。有効成分クロチアニジンで芝生に使える農薬といえば『フルスウィング』です。『フルスウィング』はゴルフ場でも使用される芝生専用殺虫剤であり、コガネムシ・スジキリヨトウ・シバツトガ・タマヤナガ・シバオサゾウムシなど多くの害虫に適用されている人気製品ですので、害虫対策として一本持っておけば安心です。

また、芝生に使える農薬である『ダイアジノン粒剤5号』は、以前は適用作物「稲」+適用害虫「キリウジガガンボ」で登録されていましたが、「登録維持のための資料整備に経費と時間を要するため」という理由で平成20年11月5日に登録削除を行っています。『ダイアジノン粒剤5号』はコガネムシやネキリムシなど土壌害虫に幅広く使えて、適用作物の範囲も広いので家庭菜園もしている人には馴染みがある農薬かもしれません。

『フルスウィング』や『ダイアジノン粒剤5号』をコガネムシ幼虫・スジキリヨトウ・シバツトガなどへの対策として芝生に使用している方は、もしかしたら一緒にガガンボの幼虫も駆除しているのかもしれませんね。

なお、芝生用の殺虫剤の使い方については以下の記事で詳しく解説していますので、殺虫剤を使ったことがなくて使い方がよくわからないという方は是非ご覧ください。

スミチオンはガガンボの幼虫に効果があるのか?(2023年6月更新)

スミチオンは最もメジャーな芝生用殺虫剤の一つであり、ガガンボの幼虫に効果があるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。

残念ながら前述したとおり、芝に使用できる殺虫剤(農薬)でガガンボに適用登録されているものはありませんので、スミチオンもガガンボに効果があると認められてはいません。

しかし、私は別の種類の芝生の害虫(シバツトガ幼虫)を狙ってスミチオンを散布した日の翌朝に、芝生の上で苦しんでいるガガンボの幼虫を発見したことがあります。

ガガンボの幼虫はまだ生きてはいましたが、明らかに何か苦しんでおりひん死の状態でした。私は毎日のように芝生の見回りをしていますが、ガガンボの幼虫を地上で見かけることは極めて珍しいことです。

もちろん、これをもってスミチオンがガガンボの幼虫に効果があると言い切ることはできません。これがスミチオンの効果と捉えるか、ただの偶然と捉えるかはみなさんの判断にお任せしますが、個人的にはスミチオンの効果があった可能性はあるんじゃないかなと思いました。

まとめ

芝生の害虫@ガガンボの幼虫についてのまとめです。

  1. ガガンボの幼虫は芝生の新芽や根を食べる害虫である
  2. 幼虫が発生するのは土壌の水はけが悪い証拠
    芝生の生育のためにも水はけの改善をした方が良い
  3. 幼虫は地中の浅いところにいるのでサッチングでも駆除できる
  4. 成虫を見つけたら産卵する前に駆除する
  5. ガガンボに適用登録された芝生向け農薬(殺虫剤)は無いが、
    市販の芝生向け農薬が効く可能性はある

ガガンボの被害から芝生を守る方法としては、まずはガガンボが大量発生しないような環境を整えた上で、発生したガガンボについては個別に対処していくことが基本です。もしあなたがガガンボの被害に悩んでいるなら参考にしてみてください。



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↓私が庭DIYや芝生管理で実際に使っている“おすすめ製品まとめ”はこちら↓

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