TM9が先祖返りするとどうなるのか【対策解説】

芝生のTM9を育てている方は、先祖返りという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

聞いたことはあるけど意味は知らないという方や、知ってるけど対策がわからないという方も多いと思います。

しかし、TM9の先祖返りを放っておくと、見た目が綺麗じゃない芝生が広がってしまって取り返しがつかないことになるかもしれません。それぐらいTM9にとって先祖返りは、切っても切れない問題と言えます。

でも安心してください。この記事では、そもそも先祖返りとは何なのか、TM9が先祖返りするとどうなるのか、先祖返りの対策はどうすれば良いのか、順を追って全て解説していきます。

芝生初心者の方もこの記事を読めば、TM9の先祖返りについて一から学ぶことができますので、先祖返りについて知りたい方は是非最後までご覧ください!

目次

TM9の先祖返りについて

先祖返りってなに?

園芸・ガーデニング業界において「先祖返り」とは「交配や突然変異により品種改良した植物が、品種改良前の状態に戻ること」を言います。

TM9という芝生は、高麗芝という芝生を品種改良して作られたものです。TM9は従来の高麗芝と比べて、芝の葉が緻密で色が濃い(濃緑)ことや、芝の葉が伸びにくいので管理が楽といった特徴があります。

しかし、TM9が先祖返りすると品種改良前の高麗芝の状態に戻ってしまい、TM9の特徴が失われてしまうのです。

TM9が先祖返りする原因

植物が先祖返りするのは、遺伝子の突然変異や品種間の交雑によるものだと言われています。

なかでもTM9が先祖返りする主な原因は、TM9同士が交配して次世代の芝生が生まれること、つまり種子繁殖することです。

TM9の穂(雌しべと雄しべ)

TM9をはじめとした日本芝は、栄養繁殖といって匍匐茎が伸びることにより繁殖する特性があります。日本芝にも雌しべと雄しべがあり種子を作ることはありますが、日本芝の種子は滅多に発芽しません。日本芝は種子による繁殖、すなわち種子繁殖はほとんど行わないのですが、稀に種子繁殖することがあります。

栄養繁殖は無性繁殖なので親と同じ特性をもったTM9が増えますが、種子繁殖は有性繁殖なので親と違う特性をもった芝生が生まれます。人間でも親と子が全く同じ性質をもっていることはなく、似ていても違うのが当たり前なのと同じことです。

つまり、TM9が先祖返りする原因は、TM9が種子繁殖することで品種改良前の特性をもった芝生(TM9ではない芝生)が生まれてしまうこと、というわけです。

TM9が先祖返りするとどうなるのか

この記事を読んでいる方の中には、TM9が先祖返りするっていう噂は知ってるけど本当にあるの?都市伝説じゃないの?と思っている方がいるかもしれませんが、残念ながらTM9の先祖返りは本当に存在します。

実際にうちの庭のTM9で先祖返りした場所がありますので写真を紹介します。

<2022年5月撮影>
写真左側は通常のTM9です(先祖返りしていないTM9)
写真右側は先祖返りしたTM9です


先祖返りしたTM9の拡大写真です

写真を見れば一目瞭然ですが、先祖返りしたTM9の葉の太さ・葉の長さ・葉の硬さ・葉が伸びるスピードは、通常のTM9と比べて全く違います。先祖返りしたTM9の葉には産毛のような細かい毛が生えているという違いもありました。

<2022年8月撮影>
写真左側は新しいTM9です(先祖返りしていないもの)
写真右側は先祖返りしたTM9です
先祖返りしたTM9は匍匐系が伸びる勢いも強く、5月のときにあったハゲ部分は先祖返りしたTM9で埋め尽くされました。

先祖返りしたTM9を芝刈りした後の拡大写真です

通常のTM9を芝刈りした後の拡大写真です

芝刈りをして刈り揃えれば、遠目には違いがわかりにくくなりますが、近くで見るとやはり大きな違いがあります。

通常のTM9は緻密で柔らかい印象の芝生を形成していますが、先祖返りしたTM9は密度が低く粗っぽい印象の芝生になっています。どちらが好みかは人によるかもしれませんが、少なくとも全くの別物であるということがわかりますね。

いや、これは流石に先祖返りとかじゃなくて野芝じゃないの!?

と思うかもしれませんが、うちの庭にはTM9以外の芝生は植えたことがありません。TM9を購入したときにはこんなに葉が太い芝はありませんでしたが、いつからかはわかりませんが気が付いたときにはこの芝生が生えてきていたのです。

先祖返りの厄介なところは、いつ発生するかわからないことと、一度発生したらどんどん拡がっていくことです。上の2022年8月撮影の写真上部のコンクリート際などをよく見ると、先祖返りしたTM9が通常のTM9側に浸食していっていることがわかります。

このように、先祖返りしたTM9を放っておくと、先祖返りしていない通常のTM9のエリアにまでどんどん勢力を拡大していくので、先祖返りを拡げたくない場合は早急に対策を行う必要があります。

TM9の先祖返り対策

TM9の先祖返り対策として、第一にTM9の先祖返りを防ぐ方法、第二に先祖返りしたTM9への対処方法を解説します。

TM9の先祖返りを防ぐ方法

TM9の先祖返りを防ぐ方法とは、TM9の穂が伸びてきたら種を落とす前に刈り取ることです。

芝生の穂を刈り取る作業のことを「穂刈り」と言い、TM9を綺麗に管理するためには欠かせない作業の一つです。

TM9が先祖返りする主な原因は、TM9同士が交配して次世代の芝生が生まれること、つまり種子繁殖することなので、TM9が種子を作る前に穂を刈り取ることが有効な対策になります。

TM9の穂(雌しべと雄しべ)

TM9は通常の高麗芝よりも穂が出やすい性質があり、特に春と秋にはすごい勢いで穂を出すことがあります。

TM9の穂が伸びてきたら、芝刈り機で刈り取るというのが穂刈りの基本的なやり方です。

穂の量によっても違いますが、穂が伸びる時期はできるだけ2週間に1回程度は穂刈りをすると良いでしょう。

穂刈りについては以下の記事で詳しく解説していますので、是非あわせてご覧ください。

穂刈りした後のTM9

ただし、いくら穂刈りをしていても、先祖返りを100%防げるというわけではありません。もし先祖返りが発生してしまったときには、次項以降の内容を参考に対処してください。

先祖返りしたTM9を元に戻す方法

残念ながら、先祖返りしてしまったTM9を元に戻す方法はありません。

それどころか、先祖返りしたTM9を放っておくと、先祖返りしていない通常のTM9のエリアにまでどんどん勢力を拡大していくので、先祖返りを拡げたくない場合は早急に対策を行う必要があります。

それでは既に先祖返りしてしまったTM9にはどう対処すれば良いのでしょうか?実は、TM9を開発したトヨタ自動車のWEBサイトに回答が載っています。

<なんか違う芝生が生えてきたけど?>

TM9は、在来品種と比べて草丈が半分以下であるため、TM9と異なる芝生が入っている場合は、広がるにつれて目立つようになります。
目視で確認できた場合は、ラウンドアップ等(グリホサート系)の除草剤にて除去したい部分へ散布して下さい。 枯れた段階で、枯れている部分をスコップ等で除去して下さい。
除去面積が大きい場合は、TM9を部分的に張り直し、小さい場合であれば、周りのTM9によって徐々に被覆しますので、自然に塞がるまで養生して下さい。

(引用:トヨタ自動車 TM9ポータルサイト Q&Aよくある質問

つまり、TM9と異なる芝生が生えてきた場合は、除草剤で枯らしてから除去して張り直す(または周囲から自然に塞がるのを待つ)のが正しい対応となります。

先祖返りしたTM9というのは、すでに遺伝子的にTM9ではない芝生=TM9と異なる芝生ですので、このように除草剤で枯らしてから除去して張り直すしか対処方法はありません。

ちょっと残酷なように感じるかもしれませんが、先祖返りしたTM9を放っておくとどんどん勢力を拡大してしまうので、対応するのであれば早い内にやったほうが傷が浅くすみます。

ここで使用する除草剤は、ラウンドアップ等(グリホサート系)の芝生そのものを枯らす効果がある除草剤にします。芝生用の除草剤ではありませんので注意してください。

ラウンドアップは芝生を枯らす効果があるので、枯らしたくない部分の芝生には絶対に使用しないように!

狙い通りに先祖返りした部分の芝生が枯れたら、枯れた芝生を剥がして新しいTM9に張り替えるようにしましょう。TM9は人気がありホームセンターでも売り切れてしまうことがあるので、絶対に入手したい方はネット通販で購入すると確実です。

また、芝生を張り替えるときは土壌改良を行う絶好のチャンスでもあります。芝生の調子が悪いことに悩んでいる方は、この機会にしっかり土壌改良することをおすすめします。芝生の張り替えについては以下の記事で詳しく解説しています。

先祖返りを放置するという選択肢

ここまで先祖返りの対策を解説してきましたが、何回も穂刈りをしたり、除草剤を使ったり芝生を張り替えたり、そんなめんどくさいことはやりたくない!という方もいると思います。

それでは、先祖返りの対策を行わずに放置するとどうなるでしょうか?いつかはわかりませんが、どこかのタイミングで先祖返りするTM9が発生します。先祖返りしたTM9は徐々に勢力を拡大して、元々あったTM9と入れ替わっていく(先祖返りしたTM9の比率が高くなっていく)のではないかと推測されます。

ということは、先祖返りしたTM9(葉幅が太く・葉が長く・葉が硬く・葉が伸びるスピードが速い)が広がっても問題ないと思う方は、先祖返りの対策を行う必要はありません。手間をかけずに芝生を維持することを優先するならば、あえて先祖返り対策を行わないというのもアリなんです。

しかし、本来のTM9ならではの緻密で美しい芝生を維持したいならば、先祖返りを防ぐために対策が必要なことは事実です。先祖返りの対策を行うべきか、放置しても良いのかについては、あなたがどんな芝生を目指したいのかによって答えが変わります。忙しくてそこまで芝生に手を掛けられないという場合は、良い意味で手を抜いて管理するのも選択肢の一つですよ。

まとめ

TM9の先祖返りについてのまとめです。

  1. TM9の先祖返りとは、交配や突然変異によりTM9が品種改良前の高麗芝の状態に戻ってしまい、TM9の特徴が失われてしまうこと。
  2. TM9が先祖返りする主な原因は、TM9が種子繁殖することで品種改良前の特性をもった芝生(TM9ではない芝生)が生まれてしまうこと
  3. 先祖返りしたTM9は葉が太い・長い・硬い・伸びるスピードが速いという特徴があり、通常のTM9と比べて密度が低く粗い印象の芝生になりやすい。
  4. TM9の先祖返りを防ぐ方法は、TM9の穂が伸びてきたら種を落とす前に刈り取ること。この作業を穂刈りという。
  5. 一度でも先祖返りしてしまったTM9を元に戻す方法はない。先祖返りしてしまった場合の対策は、除草剤で枯らしてから除去して張り直す(または周囲から自然に塞がるのを待つ)のが正しい対応。
  6. 手間をかけずに芝生を維持したい場合や、先祖返りしたTM9の見た目が気にならない場合は、あえて先祖返り対策をせずに放置するのも一つの選択肢となる。

TM9にとって先祖返りは厄介な問題ですが、しっかり対策すれば手遅れになる前に対処することができますよ。

穂刈りの方法については以下の記事で詳しく解説していますので、是非あわせてご覧ください。

以上、少しでも参考になれば幸いです。



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