なるべくお金をかけずに元気な芝生を手に入れたいですか?
それなら手動ドリルコアリングをおすすめします。
芝生のドリルコアリング(通称:ドリコア)は電動ドライバーなどの工具にドリルを装着して行うのが一般的な方法ですが、工具を揃えるための費用がかかるのが難点です。
でもご安心ください。高価な電動工具を買わなくても、手動で地面に穴を開けられる道具を使えば費用を抑えてドリコアすることも出来ますよ。
地面に直径の大きい穴を開けるためには、通常であれば高価なアースオーガーという機械が必要ですが、手掘りするなら機械がなくても何とかなります。
本当に手掘りでドリコアできるの?と思われるかもしれませんが大丈夫です。
今回は私が実際に手作業で深さ20cm以上の縦穴を約150個掘った経験を踏まえて、手動ドリコアのやり方から注意点・芝生への効果まで詳しく解説していきます。
地面がカチカチで芝生が上手く育たない、芝生を剥がさずに深くまで土壌改良したい、なるべく費用をかけずにドリコアしたいという方は、是非最後までご覧ください!
芝生のドリルコアリング(ドリコア)とは?
ドリルコアリング(通称:ドリコア)とは、ドリルを使用してコアリングという芝生の管理作業をする行為のことを指します。
ドリルコアリングに使用する道具に明確な定義はありませんが、電動ドライバーなどの電動工具にアースドリルという小型のドリルを装着してコアリングに使うことが一般的です。
これに対して、この記事では電動工具を使わずに、穴掘り道具を使って人力で芝生に縦穴を手掘りすることを「手動ドリコア」と定義します。
私が勝手にそう呼んでいるだけなので一般的な用語ではありませんが、ドリコアを手動でやるイメージですね。
ドリコアをする時期は3月~5月ごろがおすすめです。ドリコアは芝生にかなりの負担がかかる作業なため、一年中いつでもできるわけではありませんので注意してください。
なお、コアリングとは芝生(の下の床土)に穴を開けて土を入れ替えることにより、土壌の水はけや通気性を改善するエアレーションと呼ばれる作業の一種です。コアリングについては以下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は併せてご覧ください。
ドリルコアリング(ドリコア)のメリット
ドリコアのメリットは、通常のコアリングよりも穴のサイズ(直径・深さ)が大きく、入れ替えられる土の量が多い分、高い土壌改良効果が期待できることです。
特に、真砂土主体で転圧された硬い土壌や、粘土質で水はけの悪い土壌に悩んでいる方には、ドリコアがおすすめです。
土壌の悪さに悩んでいる方にとって、張り替え以外の方法では現状最も有効かつ再現性が高い方法の一つです。
さらに、ドリコアの真価は穴の深さにあります。通常のコアリングでは深さ7〜10cm程度の細い穴しか開けられませんが、ドリコアでは深さ20cm程度までは比較的簡単に穴を開けられますし、やり方によっては深さ30cm以上掘ることもできます。
深い縦穴を掘ることにより、深層へ水や空気の通り道を作ることができますので、土中環境を改善して芝生の根の成長を促すことができるのです。
深層の土壌改良が可能ということは、通常のコアリングにはないドリコアだけの大きなメリットと言えるでしょう。
ドリルコアリング(ドリコア)のデメリット
ドリコアのデメリットは、機材を揃える必要があるので初期費用がかかることと、作業が大変なことです。
ドリコアは機材を使うので通常のコアリングより楽なんじゃないかと思うかもしれませんが、実際には通常のコアリングより大変です。
中腰の姿勢で長時間作業することになるので腰への負担が大きいのと、地面を掘る時に暴れるドリルを押さえつけるのに力がいることなどが理由です。
一気に庭を全面やろうとするとすごく大変なので、何日かにわけて少しずつ進めたり、場合によっては一年で終わらせるのではなく「今年はこのエリア」というようにエリア分けをして計画的にドリコアするのも有効ですよ。
実践レポート!手動ドリコアで縦穴150個掘ってみた
手動ドリコアに必要な道具
手動ドリコアに必要な道具は、以下の通りです。
まず、最初に使用するのは、球根植え器(ホールカッター)です。
球根植え器は球根や苗を植えるための植え穴をあけるための道具ですが、これを使うと芝生をきれいにくり抜くことができます。中でもこちらのΦ80mmのホールカッターは切れ味が良く、サイズもちょうど良いのでおすすめです。
球根植え器は、ドリルで穴を開ける場所の芝生をあらかじめくり抜いておき、ドリコアが終わってから芝生を元に戻すために使用します。当たり前ですが、球根植え器は球根や苗を植えるときにもすごく便利なので、家庭菜園やガーデニング好きの方は一つ持っておくと重宝する道具です。
次に、手動ドリコアのメインで使用するのは、螺旋式の穴掘り道具(螺旋穴掘り)です。
螺旋穴掘りは、地面に縦穴をあけるための専用道具であり、支柱を立てるときの下穴あけや土壌改良などの用途で使用されるものです。
螺旋穴掘りの直径(Φ)の大きさは製品毎に色々あります。基本的には直径が大きくなるほどコアリングの効果は大きくなりますが、それに比例して労力は大変になります。
色んなメーカーから類似の製品が販売されていますが、私のおすすめは浅香工業の金象印Φ75mmの螺旋穴掘りです。金象印は日本製でガンガン使っても長持ちするので、土木作業系の工具は金象印を選べばまず間違いありません。中でも金象印のWらせん穴掘りΦ75mmは土中の小石を掘り出しやすく、前述した球根植え器との相性もバッチリなのでセットで購入することをおすすめします。
続いて、手動ドリコアをするときにあると便利な道具は以下のとおりです。
それぞれの道具の使い方は、実践レポートで詳しく解説していきます。
手動ドリコアのやり方
手動ドリコアをするときは、いきなり穴を掘り始めるのではなく、最初にまず計画を立てましょう。
ドリコアは主に土壌改良の目的で行うものなので、土壌に問題のないエリアまでドリコアする必要はありません。
また、庭全面の土壌改良をやりたいとしても、一気に全面やろうとせず優先順位をつけて計画的に進めることをおすすめします。
手動ドリコアは時間と労力が必要な作業ですので、土壌に問題があり芝生の生育が悪いエリアから優先的に進めていきましょう。
手動ドリコアの計画を立てたら、計画に基づいて準備を整えていきましょう。
まず、ドリコアをするときは水糸と杭を使って穴を開ける位置を決めていくことをおすすめします。
これは等間隔でドリコアすることにより効率的に土壌改良の効果を期待できることの他に、今年ドリコアした位置を正確に記録しておくことにより、来年以降にドリコアするときに穴の位置が被らないようにする目的もあります。
また、ドリコアを始めると、くり抜いた芝生や掘り返した土・石の置き場所が必要になります。
芝生外に置き場所を確保しておくのも良いですが、確保が難しい場合は芝生の上(ドリコアするエリアの近く)にブルーシートを敷いて置き場所にするのも有効です。
ブルーシートが飛ばないように重しも兼ねて、トロ舟・バケツや剣先スコップなどの道具を載せておくと後の作業がスムーズに進みます。
芝生にブルーシートを敷く場合、季節や天候にもよりますが1〜2日程度であれば問題はありません。何日もそのままにしておくと芝生がダメージを受けて最悪の場合は枯れてしまいますので、長時間そのままにはしないでくださいね。
準備ができたらいよいよ穴を掘り始めます。
水糸につけた目印を参考にして穴を掘る位置を確認したら、球根植え器で芝生をくり抜いていきます。
上から軽く体重をかけつつ、ねじりながら少しずつ押し込んでいくのがコツですよ。
土壌の状態や芝生のランナーの密度によっては地面が硬いことがありますので、最初のうちは無理せずに少しずつやってみてください。
力任せにねじりこんでいると、園芸用の手袋をしていても手の皮がめくれてしまうことがあるので気をつけてくださいね(経験者は語る)。
芝生をくり抜く深さは、芝の根の成長具合や土壌の状態にもよりますが、5cm前後を目安にしてみてください。
根の成長が極端に悪い場合や、土壌がカチカチでうまくくり抜けない場合は、できる範囲でくり抜いてもらえれば構いません。
くり抜いた芝生は後から戻して再利用しますので、作業中にカラカラに乾いて枯れてしまわないように、日陰に並べて置いておきましょう。
続いて、芝生をくり抜いた穴に螺旋穴掘りをセットして縦穴を掘っていきましょう。
上から体重をかけて、強く押し込みながらねじ込むように回していきます。すると、螺旋にそって螺旋穴掘りが地中に潜っていくことにより、縦穴を掘ることができるという寸法です。
螺旋穴掘りで縦穴を掘るコツは、一気に奥までねじり込みすぎず、こまめに引き抜いて掘り出した土を捨てることです。
特に土壌が粘土質で水分を含んでいる場合は、土が重たいので一気に引き抜こうとすると腰を痛める可能性があるので気を付けてください。
なお、螺旋穴掘りを使えば、剣先スコップが刺さるぐらいの土壌であれば問題なく手掘りできますが、土の中に石が多い場合は掘りにくいのが難点です。
螺旋穴掘りが地中の石に当たって掘り進めない場合は、縦穴に移植ごてなどの細いスコップを突っ込んで石を掘り出しましょう。
それでも石が大きくて掘り出せない場合は、ターフカッターなどでいったん芝生を剥がしてから、剣先スコップなどで大きく掘り起こすしかありません。
ただし、石にあたるたびに全て掘り起こすのはとても非効率的というかしんどすぎます。深い位置の石を目掛けて掘り起こすのはタイパが悪いと思います。
私は10cmより深い位置の石は無視する(そこで掘るのを止めて次へいく)ようにしていました。
あまりにも石が多くてどうしても掘り出したいのであれば、最初からドリコアではなく芝生を剥がして土壌改良する方が効率的でおすすめですよ。
なお、縦穴を掘る深さは、土壌の状態や掘り手の体力にもよるので一概には言えませんが、なるべく20cm程度を目指すと良いでしょう。
もしできるならば、不透水層(水を通さない転圧された層または粘土層)を掘り抜いて、水をよく通す砂礫層まで掘るのが理想です。
砂礫層まで掘ることができれば、地下に水と空気を通すバイパスができるので、高い土壌改良効果が期待できます。
ただし、どこまで掘れば砂礫層に届くのかは土地によって違います。うちの庭では1m以上掘っても粘土層を抜けない地点もあれば、50cmで砂礫層に達した地点もありました。
このように同じ庭の中でも不透水層の分厚さは全然違いますので、できる範囲でやってみてできればいいなぐらいの感覚がいいですよ。
なお、掘り起こした土は園芸用ふるいにかけて再利用することもできます。粘土質で再利用できない土は土嚢袋にまとめておいて、作業が全て終わってから処分するようにしましょう。残土の処分方法に困っている方は以下の記事もあわせてご覧ください。
縦穴を掘り終わったら、砂で縦穴を埋め戻していきます。
一つの穴を掘るごとに埋め戻していると作業効率が悪いので、一日で掘る予定の穴を全部掘ってから埋め戻すといいですよ。
縦穴を埋め戻すときは、まず地表近くまで砂を入れてから、角材などで突き固めてください。
結構きつめに突き固めておかないと、後から穴に入れた砂が締まることで凹んでしまい不陸原因になるので注意しましょう。
手動ドリコアの埋め戻しに使う砂は、川砂100%よりも保水性や保肥性も考慮したブレンド目砂をおすすめします。
ブレンド目砂とは、川砂をベースとして黒土やピートモスなどの資材をブレンドして作った目砂です。
ブレンド目砂の作り方は以下の記事で詳しく解説しています。自分好みの砂を簡単に作れるので、芝生にこだわりのある方は是非一度試してみてください。
ブレンド目砂を作るのがめんどくさいという方には、バロネスの目土がおすすめです。芝生愛好家の間でも評判の高い目土で、バロネスの目土はそのまま床土にも使えるので手動ドリコアの埋め戻しにも最適です。
縦穴に砂を入れたら、最後にくり抜いた芝生を元に戻して馴染ませます。
穴から少しはみ出るぐらい多めに砂を盛って、そこに芝生を戻したら上から踏んで転圧します。
ここで絶対に注意してほしいのは、穴の部分が周囲より高くならないように(凸の状態)することです。
周囲より少し低い(凹の状態)であれば後から砂を足して調整できますが、周囲より高くなってしまうと後から修正ができません。
そのため、くり抜いた芝生を元に戻す時は周囲とフラットか少し低い状態(できれば5mm以内)を目指すことをおすすめします。
地面の高さは目で見ているだけではわかりにくいので、手で押してみたり踏んだ時の足裏の感覚で見極めると良いですよ。
ちょうど良い高さに芝生を戻せたら、上から目砂を被せて芝生の保護をして、最後にたっぷりと散水してあげたら完了です。
手動ドリコアの効果
実際に手動ドリコアをしたうちの芝生がどのように成長したのか見てみましょう。
手動ドリコアで掘った穴の周囲は、芝生の生育状況が良いことがわかります。
ただし、元の芝生の状態などにもよりますが、約20㎡の芝生範囲に150個の縦穴(直径8cm・深さ20cm以上)を掘る程度では、イマイチな芝生がいきなり理想的な芝生に変身することはありませんでした。
残念ながら、多少の縦穴を掘ったところで土壌改良の効果は穴の周囲に限られますし、私の経験からすると恒常的に手入れ不要の芝生が手に入ることもありえないと考えています。
それでもドリコアが芝生を剥がさずに土壌改良できる貴重な手段であることは変わりませんし、芝生の生育状況を一定程度良くする効果があることは事実です。
ドリコアは魔法ではありませんので過度な期待は禁物ですが、計画的に取り組めば芝生の調子を良くする効果は期待できると考えています。
手動ドリコアのデメリット
手動ドリコアのデメリットは、穴を掘るのがめちゃくちゃしんどいことです。
私が手動ドリコアで約20㎡の芝生範囲に150個の縦穴を掘るのに要した作業時間は約24時間です。(資材の購入や計画等の準備に要した時間を除く作業時間のみカウント)
1日6時間作業をするとして4日間、週1で毎週作業をするとしても1ヵ月間かかる計算となります。
私はそれほど体力に自信がある方ではないので、人によってはもう少し効率よくできるかもしれませんが、それでも相当大変な作業だと思います。
手動ドリコアをする時は計画的にエリアを決めて少しずつやること、そして何より無理をせずに適度に休憩をとりながらやることをおすすめします。
芝生の張り替えと手動ドリコアはどちらが効果的なのか?
手動ドリコアがそんなにしんどいんだったら、いっそ芝生を剥がして土壌改良してから張り直した方がいいんじゃないの?と思われる方もいると思いますが、芝生の張り替えはもっとしんどいです。
私が手動ドリコアで150個の縦穴を掘ったときと、約3㎡の芝生を剥がして30cmの深さまで土壌改良してから張り直したときに、それぞれ要した時間と費用の比較は以下のとおりです。
手動ドリコア | 芝生張り替え | |
作業内容 | 縦穴掘り平均7.5個/1㎡ 縦穴の深さ平均20cm | 既存の芝生を剥がし、 土壌改良約30cm |
作業時間/1㎡ | 1.2時間 | 6.0時間 |
材料費用/1㎡(※) | 約100円 | 約3,500円 |
まず、手動ドリコアと芝生張り替えを比較すると、芝生張り替えの方がはるかに時間がかかることがわかります。
作業内容はどちらも地面を掘って土を入れ替えますので負けず劣らず大変な作業です。ですので、作業時間の差がそのまま労力の差と考えてもらうとわかりやすいと思います。
1㎡あたりの作業時間は、手動ドリコア1.2時間に対して張り替え6時間ですので、単純に考えて張り替えは手動ドリコアの5倍はしんどいということになります。
また、費用面においても両者には相当の差があり、芝生張り替えの場合は芝生を再利用する(新しい芝生を購入しない)場合でも土壌改良する土の量が多いことからかなりの費用がかかります。
ただし、芝生の仕上がりという意味では芝生を剥がして全面土壌改良する方が明らかに優位です。
おおまかな考え方としては、広い範囲の芝生を満遍なく土壌改良するのに向いているのはドリコア(手動ドリコア含む)で、芝生の範囲を絞って徹底的に土壌改良したい場合は張り替えが向いています。
あとは自分に庭の芝生の状態や広さ、どういう芝生を目指したいのか、作業にかけられる時間・労力や費用などを踏まえて考えると良いでしょう。
(※)道具の購入費用や芝生の購入費用は含まない(芝生を再利用する前提での比較)。費用は土壌改良に使用する資材によっても大きく異なるが、ここでは最低限の費用を試算するためにホームセンターの砂(20kgで228円)を使用するものとして簡易的に計算したもの。
まとめ
手動ドリルコアリング(手動ドリコア)のまとめです。
- 手動ドリコアとは芝生のエアレーション作業(コアリング)の一種であり、電動工具を使わずに人力で芝生に縦穴を手掘りするもの。
- 手動ドリコアのメリットは、芝生を剥がさなくてもあまり費用をかけずに土中の深部まで土壌改良することができること。
- 手動ドリコアのデメリットは、穴を掘るのがめちゃくちゃしんどいこと。ただし、芝生を剥がして全面土壌改良することに比べれば1/5程度の労力で済む。
- 手動ドリコアは広い範囲の芝生を満遍なく土壌改良したい人におすすめ。芝生の張り替えは狭い範囲の芝生を徹底的に改善したい人におすすめ。
手動ドリコアは芝生を剥がさずに土壌改良できる貴重な手段の一つです。
芝生の生育が悪くて土壌改良をしたいと考えている方は、手動ドリコアのメリットとデメリットをよく考えて、他の方法とも比較して検討してみてください。
手動ドリコアは決して楽な作業ではありませんが、芝生にこだわりがあって土壌に悩んでいる方にはおすすめです。
芝生の生育が悪くて悩んでいる方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。